心肺停止は一刻を争う緊急事態で、AED(自動体外式除細動器)の使用が救命率を大きく左右します。建設現場でも、熱中症や事故、急病によって心肺停止が起こる可能性があり、AEDの知識と使い方を知っておくことが重要です。この記事では、AEDの基本と建設現場での使用方法を解説します。

屋外で重量物を扱う建設現場では、夏季の熱中症や不意の転倒、落下物による衝撃など、生命に関わる事態が発生し得ます。普段から備えを整えておくことで、いざという瞬間に落ち着いて行動できます。救命処置は医療従事者だけのものではなく、現場で働く一人ひとりが基礎知識を共有しておくことが大切です。

AEDとは

AED(自動体外式除細動器)は、心停止時に心臓に電気ショックを与えて正常な拍動を取り戻すための医療機器です。

  • 音声ガイダンス付きで操作が簡単
  • 誰でも使用可能
  • 装着すると自動で状態を判断
  • 必要時のみ電気ショック
  • 使用してはいけない場合は実行されない

操作の流れは音声が順を追って案内してくれるため、初めて手に取る方でも慌てずに進められるよう設計されています。機器本体のボタンはシンプルで、蓋を開けるだけで電源が入るタイプも多く、非常時のパニック状態でも扱いやすい工夫が施されています。

救命の連鎖

心停止から救命に至るまでの流れは「救命の連鎖」と呼ばれています。

  1. 早期認識・通報:119番
  2. 一次救命処置:心肺蘇生とAED
  3. 二次救命処置:救急隊の処置
  4. 高度な医療:病院での治療

1分経過するごとに救命率は約10%下がるため、初動が何より重要です。倒れた方を見つけた最初の数分間をどう過ごすかが、その後の予後を大きく左右すると考えられています。現場のメンバー同士で役割を事前に決めておき、いざという時に誰が何をするかを共有しておくと初動が早くなります。

AED使用の手順

AEDを使用する基本手順を紹介します。

手順内容
1.電源を入れる蓋を開ける・ボタン
2.電極パッドを装着胸の右上と左下
3.心電図の自動解析傷病者から離れる
4.電気ショックボタン押下(必要時)
5.心肺蘇生を続けるAEDの指示に従う

パッドを貼る位置はイラストで図示されていますので、落ち着いて確認すれば間違えることは少ないでしょう。解析中や電気ショックの際には周囲の人が傷病者から手を離す必要があるため、「離れてください」と声をかけ、全員の安全を確保してから操作を進めてください。

建設現場でのAED設置

建設現場にAEDを設置する場合のポイントを紹介します。

  • 事務所内・休憩所の目立つ場所
  • 全員がわかる位置に標識
  • 定期的な点検(バッテリー・パッド)
  • 使用期限の管理
  • 保管ケースの鍵開錠訓練

現場が広く分散している場合は、どこから駆け付けても数分以内に到着できるよう設置位置を検討するのがおすすめです。新たに入場する職人さんや協力会社の方にも、朝礼や新規入場者教育の際にAEDの位置を案内し、現場全体で共有できる状態を維持しましょう。

発見時の初動

倒れている人を発見した時の初動対応は以下のとおりです。

  1. 安全確認:周囲の危険物・車両等
  2. 意識確認:「大丈夫ですか?」と声掛け
  3. 応援要請:周囲に助けを求める
  4. 119番通報:誰かに依頼
  5. AEDの手配:誰かに取りに行ってもらう
  6. 呼吸確認:胸の動きをチェック

一人で抱え込まずに周囲へ助けを求めることが、対応のスピードを飛躍的に高める鍵です。通報を頼む際は「あなた、119番をお願いします」「あなた、AEDを取ってきてください」と特定の人に具体的に指示を出すと、責任の所在が明確になり行動が進みます。

心肺蘇生法との併用

AEDは心肺蘇生(胸骨圧迫)と併用することで効果を発揮します。

  • AEDが到着するまで胸骨圧迫を継続
  • AED装着中も圧迫を続ける
  • 電気ショック後も圧迫を再開
  • 救急隊到着まで交代しながら継続

AEDはあくまで心臓のリズムを整える補助機器であり、単独で生命を維持できるわけではありません。血液を脳や全身に送り続けるためには胸骨圧迫が不可欠です。機器が解析している短い時間を除けば、可能な限り圧迫を止めずに続けることが重要な考え方です。

胸骨圧迫の方法

胸骨圧迫(心臓マッサージ)の基本手順は以下のとおりです。

  • 胸の真ん中に手を重ねる
  • 肘をまっすぐ伸ばす
  • 垂直に5cmほど押し込む
  • 1分間に100〜120回のテンポ
  • 30回圧迫+2回人工呼吸
  • 疲れたら交代

適切な深さとテンポを維持するのは想像以上に体力を使う作業です。講習で体験してみると、わずか数分でも腕や肩に疲労が溜まることが実感できます。現場に複数人がいる場合は、数十秒から1〜2分程度で交代しながら質の高い圧迫を続けるのが望ましいとされています。

AED使用時の注意点

AED使用時に気をつけるべきポイントを紹介します。

  • 濡れた胸は拭いてから装着
  • ペースメーカーは避けて装着
  • 貼り薬は剥がしてから
  • 胸毛が濃い場合は剃る(付属品)
  • 金属(ネックレス等)から離す
  • 電気ショック時は触れない

汗や雨でぬれた胸部はパッドの密着を妨げ、電気ショックの効果を損ねる恐れがあります。現場では発汗が多いため、AEDに同梱されているタオルやガーゼを使って素早く拭き取ることを意識してください。胸毛処理用のかみそりや予備パッドが付属している機種もありますので、保管場所を確認しておきましょう。

救命講習の受講

AEDを正しく使うためには、事前の講習受講が有効です。

  1. 消防署の救命講習(普通/上級)
  2. 赤十字の救急法講習
  3. 会社の安全衛生教育
  4. AEDメーカーの講習

3時間程度の講習で、基本的な使い方を身につけられます。文字で読むだけでは分からない感覚を、人形を使った実技で体で覚えられる点が講習の大きな価値です。定期的に復習することで、いざという時の動作が自然に出るようになります。

使用後の対応

AEDを使用した後の対応も重要です。

  • 使用済みパッドの廃棄
  • 新しいパッドの補充
  • バッテリー残量の確認
  • 使用記録の保管
  • 消防・医療機関への情報提供

使用後の機器は、次に備えて速やかに復旧作業を行う必要があります。AEDに記録された解析データは、その後の医療処置に役立つ情報となるため、救急隊や医療機関に機器ごと引き渡す運用も有効です。現場の管理者は、使用後の対応手順をあらかじめ書面で定めておくと安心です。

まとめ

AEDの使い方を知っておくことは、建設現場で命を救う重要なスキルです。救命講習を受講し、現場にAEDを設置し、定期的な訓練で使い方を確認しましょう。あなたの知識と勇気が、仲間の命を救う可能性があります。

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