建設現場では、切り傷・打撲・骨折・やけどなど、様々な事故が起こる可能性があります。医療機関に到着するまでの応急処置が、その後の経過を大きく左右することもあります。この記事では、建設現場で知っておくべき応急処置の基本手順を解説します。
応急処置の基本原則
応急処置を行う際の基本原則は以下のとおりです。何が起こっても慌てずに対応できるよう、普段から原則を頭に入れておくことが大切です。
- 自分の安全確保:二次災害を防ぐ
- 状況の観察:怪我の程度を判断
- 適切な処置:自分ができる範囲で
- 医療機関への連絡:必要に応じて119番
- 冷静な対応:パニックにならない
特に意識したいのが最初の「自分の安全確保」です。助けようとした側が同じ事故に巻き込まれてしまえば、被害は一気に広がります。駆け寄る前に周囲を見渡し、落下物や電源、重機の動きを確認する習慣を身につけておきましょう。
切り傷の応急処置
切り傷は建設現場でもっとも発生頻度の高い外傷です。深さや出血量によって対応が変わるため、状況をよく観察してから処置を進めます。
- 清潔な布・ガーゼで圧迫止血
- 患部を心臓より高く上げる
- 水で洗い流す(表面の汚れ除去)
- 消毒液で消毒
- 清潔な絆創膏・ガーゼで保護
- 深い場合は医療機関へ
錆びた金属や汚れた資材で切った傷は、感染のリスクが高まります。少し深めの傷や汚れが残っているような傷は、自分で判断せず早めに医療機関を受診することが、後々の回復を早めるコツです。
出血の程度別対応
出血への対応は、量と出血の仕方によって優先順位が変わります。判断に迷ったときは、より慎重な対応を選ぶのが安全です。
| 程度 | 対応 |
|---|---|
| 少量 | 圧迫止血・絆創膏 |
| 中等度 | 圧迫止血・病院へ |
| 大量 | 即119番・止血継続 |
| 動脈性 | 緊急性最優先・119番 |
動脈性の出血は脈に合わせて噴き出すように見えるのが特徴で、短時間でも体への影響が大きくなります。その場合はためらわず救急要請を行い、到着までの間は圧迫を絶やさないことが重要です。
打撲・捻挫の応急処置
打撲・捻挫には「RICE処置」が基本です。初期対応の質が、その後の回復の早さにつながります。
- R(Rest):安静にする
- I(Ice):氷で冷やす(15〜20分)
- C(Compression):包帯で圧迫
- E(Elevation):患部を高く上げる
「歩けるから大丈夫」と無理をしてしまうと、後になって痛みや腫れが長引くケースも少なくありません。違和感があれば早めに休み、翌朝に改善していなければ整形外科を受診する判断も大切です。
骨折の応急処置
骨折が疑われる場合は、無理に動かさず固定を最優先にします。骨の位置を戻そうとするのは専門家の仕事です。
- 患部を動かさない
- 添え木・固定材で固定
- 患部を冷やす
- 119番通報
- ショック症状に注意
- 無理に移動させない
現場に本格的な固定材がない場合でも、段ボール、角材、雑誌などを添え木の代わりに使えます。ショック症状には顔面蒼白や冷や汗などがあり、これらを見つけたら早急に医療機関へつなぐ判断が求められます。
やけどの応急処置
やけどは早い対応で傷の深さが変わります。最初の数分の冷却がもっとも大切です。
- すぐに流水で冷やす(15〜20分)
- 衣服は無理に脱がさない
- 水ぶくれを破らない
- 清潔な布で保護
- 広範囲・深い場合は病院へ
- 電気やけどは感電対策を優先
溶接の火花や熱い鉄板、蒸気などによるやけどは、表面が軽く見えても深部に熱が残っていることがあります。冷却を途中で止めず、痛みが引くまでしっかり冷やすのがポイントです。
熱中症の応急処置
夏場の建設現場では熱中症への対応も重要です。早期に異変に気付くことが命を守ります。
- 涼しい場所に移動
- 衣服を緩める
- 体を冷やす(首・脇・足の付け根)
- 意識があれば経口補水液を飲ませる
- 意識がない場合は119番
- 回復まで付き添う
仲間の様子がいつもと違う、返事がぼんやりしている、まっすぐ立てないなどのサインに気付いたら、本人が大丈夫だと言っても休ませる判断が必要です。熱中症は我慢するほど悪化するタイプの症状であることを覚えておきましょう。
心肺蘇生法
心肺停止が疑われる場合は、一刻も早い心肺蘇生とAEDの使用が生存率を大きく左右します。
- 意識・呼吸の確認
- 119番通報
- 胸骨圧迫(30回)
- 人工呼吸(2回)
- 繰り返し
- AEDの使用
実際の現場でいきなり正確な手順を実行するのは難しいものです。だからこそ、消防署などが行う救命講習に一度でも参加しておく経験が大きな差になります。AEDは音声案内に従えば誰でも使えるように設計されているので、恐れずに電源を入れるところから始めましょう。
感電事故の応急処置
感電事故では、二次災害に最大の注意が必要です。倒れている人に飛びつくのは絶対に避けましょう。
- 電源を遮断(ブレーカーを落とす)
- 乾いた木の棒等で電線を払う
- 直接触らない
- 心肺蘇生の準備
- やけどの処置
- 119番通報
まずは通電を止めることが第一歩です。感電した人は見た目に大きな外傷がなくても、体内に深い損傷を負っていることがあるため、必ず医療機関での診察を受けてもらいましょう。
救急箱の整備
建設現場には救急箱を常備することが重要です。主な中身は以下のとおりです。いざというときに中身が揃っていなければ意味がないため、月に一度は点検する習慣をつけましょう。
- 絆創膏・ガーゼ・包帯
- 消毒液
- 三角巾
- ハサミ・ピンセット
- 冷却シート・冷湿布
- 経口補水液
- テープ類
救急箱は誰でもすぐ取り出せる場所に置き、現場の全員にその場所を共有しておくことが大切です。場所を知らない人がいれば、緊急時にその分だけ時間をロスしてしまいます。
応急処置講習の受講
応急処置を正しく行うには、事前の講習受講が有効です。本で読むだけでなく、実際に体を動かして学んだ経験が、現場でとっさに動ける力になります。
- 消防署の救命講習
- 赤十字の応急手当法講習
- 会社の安全衛生教育
- AED講習
会社単位で定期的に受講する制度を設けているところも多く、現場で長く働くうえでは必須に近いスキルだと考えておくと良いでしょう。一度受講した人も、数年おきに再受講することで記憶と手順を更新できます。
まとめ
建設現場での応急処置は、命を救い、治療を早める重要なスキルです。事前に知識を身につけておくことで、万が一の際に適切な対応ができます。救急講習を受講し、現場の救急箱を整備して、安全な職場を作りましょう。
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