建設業界でもハラスメント防止は重要な課題です。2020年のパワハラ防止法の施行以降、各社でハラスメント対策が進んでいます。この記事では、建設業のハラスメント防止対策と職場環境改善について紹介します。
かつての建設現場では、厳しい口調や体で覚えさせる指導が当たり前とされる時代もありました。しかし、若手の早期離職や業界イメージの悪化といった課題が目立つようになり、現場文化を見直す動きが広がっています。安心して長く働ける環境づくりは、人材を守るだけでなく、会社の信用や品質にもつながる取り組みです。
ハラスメントの種類
職場で起こるハラスメントの主な種類を紹介します。まずは「どのような行為がハラスメントに当たるのか」を共通認識として持つことが、予防の第一歩です。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- カスタマーハラスメント
- アルコールハラスメント
建設業では元請と下請、先輩と後輩、職人と協力会社など、関係者の立場がはっきりしている場面が多く、立場の差が意図せぬ圧力になってしまうこともあります。本人が悪気なく発した一言でも、相手にとって大きな苦痛になる場合がある点は、現場で働くすべての方に意識してほしい部分です。
パワハラの定義
パワハラの3要素を紹介します。3つの要素がすべて当てはまる場合に、職場のパワーハラスメントに該当すると整理されています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 優越的な関係 | 職務上の力関係 |
| 業務の適正な範囲を超える | 必要・相当の範囲超過 |
| 精神的・身体的苦痛 | 就業環境を害する |
3要素のうち特に注目されるのが「業務の適正な範囲を超える」という部分です。指導は本来、業務を円滑に進めるために必要な行為であり、厳しさそのものが否定されているわけではありません。ただし、その厳しさが人格の否定や継続的な攻撃に変わってしまうと、指導を超えたハラスメントと判断される可能性が高くなります。
パワハラの6類型
パワハラは6つの類型に分類されます。現場でよくある場面を思い浮かべながら、自分や周囲の言動と照らし合わせてみるとよいでしょう。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(暴言・侮辱)
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害(プライバシー)
建設現場では「精神的な攻撃」と「過大な要求」が問題になりやすい傾向があります。忙しい現場ほど、つい語気が強くなったり、経験の浅い方に無理な作業量を押し付けてしまったりしがちです。6類型を共通の言葉として共有しておくと、現場の管理者同士でも注意喚起を行いやすくなります。
建設業特有の課題
建設業特有のハラスメント課題を紹介します。業界の歴史や文化に根差した部分もあり、一朝一夕で解決できるものばかりではありません。
- 職人気質・厳しい指導文化
- 男性中心の職場
- 上下関係の厳しさ
- 「昔ながら」の言動
- 女性への配慮不足
- 教育機会の不足
近年は女性の技術者や職人も増えており、男性中心だった現場の文化に少しずつ変化が生まれています。更衣スペースや休憩室の整備、現場での声のかけ方など、細やかな配慮が求められるようになりました。働き方の多様化を受け入れる柔軟さが、これからの現場運営には欠かせません。
パワハラ防止法
2020年6月施行のパワハラ防止法について紹介します。建設業界の会社も当然対象になっており、経営層だけの問題ではなく、現場の管理監督者一人ひとりに関わる制度です。
- 大企業:2020年6月
- 中小企業:2022年4月
- 全企業に措置義務
- 方針の明確化
- 相談体制の整備
- 事後の対応
法律で求められているのは、あくまで「防止のための措置を講じること」です。方針の周知、相談窓口の設置、事後対応の手順整備など、会社として取るべき行動の基本は共通しており、まだ対応が不十分だと感じる現場は早めに整えておきたいところです。
会社が取るべき対策
会社が取るべき主な対策を紹介します。形式的に書類を整えるだけでなく、現場で実際に機能する仕組みに落とし込むことが大切です。
- ハラスメント禁止の方針
- 就業規則への明記
- 相談窓口の設置
- 管理職研修
- 従業員教育
- 事案発生時の対応
- プライバシー保護
対策を一度整えても、現場の異動や新入社員の入社に合わせて継続的に研修を行わないと、知識がすぐに薄れてしまいます。定期的な勉強会や朝礼での注意喚起など、日常業務のなかで触れる機会を意識的に作っておくことが、文化として根付かせるコツです。
相談窓口の役割
相談窓口の役割を紹介します。窓口があっても使われなければ意味がないため、相談しやすい雰囲気づくりも含めて設計することが求められます。
- 被害者の話を聴く
- プライバシーの保護
- 事実確認
- 適切な対応の検討
- 専門機関との連携
- 再発防止
社内の相談窓口に加えて、外部の専門機関や産業医と連携する仕組みを整えておくと、相談者はより安心して声を上げやすくなります。相談したことで不利益を受けないというルールを明文化し、全従業員に周知しておくことも重要な配慮です。
被害を受けた時の対応
被害を受けた時の対応を紹介します。1人で抱え込まず、信頼できる窓口や人に早めに相談することが、状況を悪化させないコツです。
- 記録を残す(日時・場所・内容)
- 証拠の保全
- 信頼できる人に相談
- 社内相談窓口の活用
- 外部機関への相談
- 労働基準監督署
- 法的対応の検討
記録を残すといっても、日記形式のメモやスマートフォンのメモ帳、メールやチャットの履歴など、身近な方法で十分です。後から時系列で状況を思い出せるだけで、相談時の説明が格段にしやすくなります。無理をして我慢を続けると心身の不調に直結するため、早めに動くことを心がけたいところです。
目撃した時の対応
ハラスメントを目撃した時の対応です。被害者だけでなく、周囲の人がどう動くかで職場の空気は大きく変わります。
- 被害者への声かけ
- 記録・証言
- 相談窓口への報告
- 見て見ぬふりをしない
- 職場全体の問題
目の前で不適切な言動があったとき、その場で直接止めるのが難しい場面もあります。そんなときも、後で被害者に声をかけたり、上司や相談窓口にそっと伝えたりするだけで、被害者の孤立を防ぐ力になります。職場全体で「見過ごさない」という姿勢を共有することが、健全な現場づくりの土台です。
指導とパワハラの違い
正しい指導とパワハラの違いを整理します。厳しさそのものが悪いのではなく、目的と手段が業務上妥当かどうかが判断の軸になります。
- 正しい指導:業務に必要・相当な範囲
- パワハラ:必要性・相当性を超える
- 指導の目的を考える
- 人格否定は禁止
- 記録を残して指導
迷ったときは、「この伝え方を新人時代の自分が受けたらどう感じるか」「第三者が見ても納得できる内容か」を自問してみる方法が有効です。感情的な怒りで一方的に責めるのではなく、何をどう直してほしいのかを具体的に伝えることが、結果として部下の成長にもつながります。
職場環境改善
根本的な職場環境改善が重要です。ハラスメントは個人の問題に見えて、実は組織文化や業務運営の歪みから生まれていることも少なくありません。
- コミュニケーションの改善
- 多様性の尊重
- 評価制度の適正化
- 労働時間の適正化
- ストレスチェック
- 風通しの良い組織
長時間労働や過度な納期プレッシャーは、人の心の余裕を奪い、結果として現場の空気をとげとげしくします。工程管理の改善や適切な人員配置など、根本的な働き方の見直しを併せて進めることで、ハラスメントが発生しにくい土壌を整えることができます。
まとめ
建設業のハラスメント防止は、業界イメージの改善と若者確保のために不可欠な取組みです。会社・管理職・従業員すべてが意識を持ち、安心して働ける職場を作りましょう。被害を受けたら1人で抱え込まず、相談窓口を活用することが大切です。
建設求人ポータルでは、職場環境の良い建設会社の求人を多数掲載しています。ぜひチェックしてみてください。