建設業の退職金制度は、業界特有の制度や一般的な退職金制度など、いくつかの選択肢があります。どの制度に加入しているか、将来いくら受け取れるかを把握しておくことが大切です。この記事では、建設業の退職金事情を比較解説します。
退職金は、長年の勤務に対するまとまった報酬として、老後の生活設計の土台になる存在です。若いうちは遠い話に感じるかもしれませんが、制度の違いによって将来受け取れる金額は大きく変わるため、早い段階で全体像を把握しておくほど準備の自由度が高まります。
建設業の退職金制度
建設業の主な退職金制度を紹介します。ひとつの会社で完結する制度もあれば、業界全体で支える仕組みもあります。
- 企業独自の退職金制度
- 建退共(建設業退職金共済)
- 中退共(中小企業退職金共済)
- 確定拠出年金
- iDeCo(個人型)
- 小規模企業共済(一人親方)
どの制度に加入しているかは会社や雇用形態によって異なります。自分の場合はどの制度が適用されるのかを、入社時の説明資料や給与明細を見ながら一度整理しておくと、将来設計の精度が上がります。
各制度の比較
主な退職金制度を比較します。それぞれ対象となる働き方や設計思想が異なるため、特徴を押さえたうえで使い分けるのがポイントです。
| 制度 | 対象 |
|---|---|
| 企業退職金 | 正社員 |
| 建退共 | 技能労働者 |
| 中退共 | 中小企業 |
| 確定拠出年金 | 会社員 |
| iDeCo | 全職種 |
| 小規模企業共済 | 個人事業主 |
制度ごとに受取時期の条件や税制優遇の内容も異なります。自分がどの制度の対象になり得るのかを知ることで、重複のない効率的な組み合わせを考えられるようになります。
企業独自の退職金
企業独自の退職金制度について紹介します。会社ごとの規程に基づく制度のため、金額や仕組みに幅があります。
- 大手ゼネコンで充実
- 勤続年数に応じて支給
- 役職・等級で変動
- 退職金規程で定義
- 会社の経営状況に影響
- 数百万〜数千万円
会社の業績や内部留保に左右されるため、長く勤めることを前提に入社する会社については、退職金規程がきちんと整備されているかを事前に確認しておくと安心です。退職金前払い制度を採用している会社もあり、その場合は毎月の給与に上乗せされる形で支給されます。
建退共
建退共の特徴を紹介します。建設業で働く技能労働者のために設けられた、業界特有の退職金制度です。
- 建設業特有の制度
- 技能労働者向け
- 事業主が掛金を負担
- 複数事業所を通算
- 国の制度で安心
- 電子化が進行中
同じ人が複数の会社を渡り歩くケースが多い建設業において、転職をしても掛金が積み上がっていく仕組みは大きな安心材料です。手帳に証紙を貼って記録する運用が長く続いてきましたが、近年は電子申請の仕組みが整えられ、管理がより手軽になっています。
中退共
中退共の特徴を紹介します。中小企業の従業員のために設けられた、国がバックアップする退職金共済制度です。
- 中小企業退職金共済
- 中小企業が加入
- 事業主が掛金負担
- 独立行政法人が運営
- 建設業以外の技能者も対象
- 国からの助成あり
自社独自の退職金制度を整えるのが難しい中小企業にとって、運用負担を抑えながら従業員に退職金を用意できる心強い仕組みです。国からの助成があることで、事業主の初期負担が軽減される設計になっています。
確定拠出年金(企業型)
確定拠出年金(企業型DC)について紹介します。掛金を会社が拠出し、運用は従業員自身が行うタイプの制度です。
- 会社が掛金を拠出
- 労働者が運用
- 60歳以降に受取
- 運用成果で給付が変動
- ポータビリティあり
- 大手・中堅企業で導入
運用商品は投資信託や定期預金などから自分で選ぶ仕組みで、どの商品を選ぶかによって将来受け取る金額が変わってきます。制度に加入したら放置せず、定期的に運用状況を確認して見直す習慣をつけておきたいところです。
iDeCo(個人型)
iDeCoの特徴を紹介します。個人が自分の意思で加入する私的年金で、税制優遇が大きいことが魅力です。
- 個人で加入する年金
- 掛金が全額所得控除
- 運用益非課税
- 60歳まで引き出せない
- 個人の選択で加入
- 全職種で利用可能
掛金が全額所得控除の対象になるため、毎年の所得税や住民税を抑えながら将来への備えを積み上げられます。その反面、原則として60歳まで引き出せないので、生活防衛資金とは別枠で運用する意識が大切です。
小規模企業共済
小規模企業共済の特徴です。会社員ではなく個人事業主や一人親方向けの制度で、退職金の代わりとして活用されます。
- 個人事業主・一人親方向け
- 退職金制度の代わり
- 掛金が全額所得控除
- 月1,000〜70,000円
- 廃業・退職時に受取
- 節税効果も大きい
掛金が全額所得控除になるため、現役中の節税と将来の資金づくりを同時に進められる仕組みです。一人親方にとっては、自分自身のセーフティネットを自分で整える手段の代表格です。
複数制度の併用
複数の制度を併用することもできます。それぞれの性質を活かして、手厚い準備を目指しましょう。
- 企業退職金+建退共
- 建退共+iDeCo
- 中退共+iDeCo
- 一人親方:建退共+小規模+iDeCo
- 併用で手厚い退職金
- それぞれの特性を活用
自分の雇用形態や将来設計に合わせて、最適な組み合わせを選ぶ視点が大切です。一つの制度だけで満足せず、利用可能な仕組みを棚卸ししながら上手に積み立てていくのが賢いやり方です。
退職金額の目安
退職金額の目安を紹介します。会社の規模や勤続年数により大きな開きがありますが、目安を知ることで対策が立てやすくなります。
- 大手ゼネコン:1500〜3000万円
- 中堅建設会社:800〜1500万円
- 中小建設会社:300〜800万円
- 建退共40年:約500万円
- iDeCo上限活用:数百万〜
- 勤続年数と会社規模で変動
これらの金額はあくまで目安であり、役職や最終給与額によっても変わってきます。自分の将来の受取見込み額をざっくりで構わないので試算してみると、必要な備えが見えてきます。
退職金の受取方法
退職金の受取方法にも選択肢があります。受取方の選び方ひとつで、税金や生活設計に与える影響が変わってきます。
- 一時金として一括受取
- 年金として分割受取
- 併用(一部一時金・一部年金)
- 税制上の有利不利
- ライフプランとの整合
- 制度により選択可能
一時金で受け取ると退職所得として課税され、年金として受け取ると雑所得として課税されます。どちらが有利かはその時点の所得状況や他の年金とのバランスによって異なるため、退職前に一度じっくり試算しておくことをおすすめします。
退職所得の税金
退職金には退職所得として税金がかかります。ただし給与よりも優遇された仕組みが用意されています。
- 退職所得控除がある
- 勤続年数で控除額決定
- 20年まで年40万円
- 20年超は年70万円
- 残額の1/2が課税対象
- 大きな優遇
長く勤めるほど控除額が大きくなり、さらに残額の半分しか課税対象にならないため、退職金の税負担は給与と比べてかなり軽くなります。長期勤続を前提にした制度設計のため、勤続年数の積み上げが将来の手取りに直結します。
準備すべきこと
退職金に向けて準備すべきことを紹介します。知ることから始めるのが、何よりのスタートラインです。
- 加入している制度の確認
- 将来の受取額試算
- 不足分の補填
- iDeCo等の追加加入
- 貯蓄の並行
- ライフプラン作成
自分が今どの制度に加入していて、どの程度の退職金が見込めるのかを一度きちんと把握しておきましょう。不足が見えてきたら、iDeCoや自助努力の貯蓄、つみたて投資などで補う計画を早めに立てておくと安心です。
まとめ
建設業の退職金は、複数の制度を組み合わせることで手厚い準備が可能です。企業退職金・建退共・iDeCoなど、自分に合った制度を選択・併用しましょう。一人親方も小規模企業共済・iDeCoの活用で退職後の生活を守れます。早めの準備が重要です。
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