建設業界は長らく「長時間労働・休日が少ない」というイメージがありましたが、近年は大きく変化しています。働き方改革の推進により、ワークライフバランスの改善に取り組む企業が増えてきました。この記事では、建設業界のWLB改善の取組み事例を紹介します。
かつての建設業界は、現場の工期を守ることが最優先され、個々の労働環境への配慮が後回しになりがちでした。しかし若手の入職者確保や女性の活躍推進といった課題を背景に、業界全体が働き方を見直す動きを強めています。数年前と比べて、求人票に記載される労働条件の項目も格段に具体的で透明性が高くなってきた印象があります。
建設業界のワークライフバランス改善
2024年4月の時間外労働規制の本格適用を機に、建設業界全体で働き方改革が加速しています。各企業はさまざまな取組みで、従業員が働きやすい環境を整えています。
規制への対応は単に法令を守るだけでなく、人材確保のための競争力向上という意味合いも強まっています。従業員が長く働き続けられる環境を整えることが、結果として企業の業績向上につながるという認識が広がり、経営層が率先して改革を進める企業も増えてきました。
主な改善の取組み
建設会社で実施されている代表的なWLB改善策を表にまとめました。
| 取組み | 内容 |
|---|---|
| 週休2日制の導入 | 4週8休または完全週休2日 |
| ICT化の推進 | 書類業務の効率化 |
| 残業時間の管理 | 月45時間以内を目標 |
| 有給取得率向上 | 年5日以上の取得 |
| フレックスタイム | 施工管理技士等で導入 |
| 育休・介護休業 | 取得しやすい制度 |
どの取組みも単独で効果を発揮するわけではなく、複数を組み合わせることで効果が大きくなる性質があります。例えば週休2日制とICT化を同時に進めれば、休日を増やしつつ業務効率を上げることができ、無理なく改革を進められる形になります。
週休2日制の普及
国土交通省が推進する「週休2日工事」のモデル化により、多くの公共工事で週休2日制が標準になっています。民間工事にも広がり、以下のような変化が起きています。
- 日曜日に加えて土曜日も休み
- 4週8休の定着
- 工期の再検討
- 発注者の理解促進
- 若手応募の増加
週休2日を定着させるためには、発注者側の工期設定に対する理解が欠かせません。従来の工程感覚のままでは休日を増やせないため、発注段階から必要な工期を十分に確保する流れが少しずつ広がっています。こうした変化は現場で働く技能者にも恩恵をもたらしています。
ICT化による業務効率化
書類業務や事務作業の時間削減は、WLB改善の重要な要素です。
- 施工管理アプリ:日報・写真を一括管理
- 電子小黒板:写真管理の時間短縮
- BIM/CIM:図面修正の効率化
- タブレット活用:現場での即時情報共有
- チャットツール:電話・メールより迅速
従来は夜間に事務所で行っていた書類整理を、現場にいる間に終わらせられるようになったという声も増えてきました。わずかな時間短縮の積み重ねが月単位で大きな差となり、結果として家族と過ごす時間や自己研鑽の時間の確保につながっています。ツールの活用スキルは今後ますます重要になるでしょう。
有給取得の促進
労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、年5日の取得が義務化されました。建設業界でもこれに対応し、有給取得率が向上しています。
有給を気軽に使える雰囲気づくりも、制度と同じくらい大切です。上司自らが率先して休暇を取得したり、取得計画を年度初めに立てたりすることで、周囲も遠慮なく取得できる空気が醸成されていきます。休暇を取ることが悪いことではないという前提が、徐々に現場にも根付きつつあります。
育児・介護との両立
子育て世代や介護世代への配慮も進んでいます。
- 育児休業取得の推進(男性も対象)
- 時短勤務制度
- テレワークの一部導入
- 配属地への配慮
- 介護休業制度の整備
男性の育児休業取得を応援する企業も増えており、かつては考えにくかった現場監督の長期育休という事例も耳にするようになりました。家庭と仕事を両立しながら長く活躍できる環境を整えることは、従業員にとっての安心材料であると同時に、企業側にとっても離職防止と人材定着の大切な施策となっています。
若手定着のための工夫
若手社員の定着率向上のため、多くの会社が以下の取組みを行っています。
- メンター制度の導入
- キャリアパスの明確化
- 社内コミュニケーションの活性化
- 福利厚生の充実
- スキルアップ支援
入社直後の若手は不安を抱えやすいため、上司ではなく斜めの関係にあるメンターに相談できる仕組みは有効です。キャリアパスが可視化されていれば、何年後にどんな仕事をしているかが想像でき、日々の業務にも意味を見出しやすくなります。若手の声を拾い上げる風土づくりが、長期的な人材育成につながります。
WLBが改善された企業の特徴
WLB改善に成功している企業には共通する特徴があります。
- 経営層のコミットメント
- 現場の声を反映した改革
- 継続的な取組み
- 具体的な数値目標
- 従業員満足度調査の実施
経営層が本気で取り組んでいる会社ほど、現場に変化が伝わるスピードが速いという傾向があります。掛け声だけでなく、具体的な数値目標と予算を伴った施策を打ち出し、結果を定期的に検証する姿勢が、従業員の信頼獲得につながります。現場の声を聞き続ける仕組みを持っていることもポイントです。
現場作業員のWLB
施工管理技士だけでなく、現場作業員のWLBも改善が進んでいます。
- 現場の直行直帰推進
- 朝礼時間の効率化
- 休憩所の整備
- 装備の充実
- 協力会社への配慮
直行直帰が認められると通勤の負担が軽くなり、拘束時間の実質的な短縮につながります。空調服や冷却装備の普及など、夏の過酷な環境で体を守る工夫も急速に広がっており、体調管理と両立しながら働きやすい環境が少しずつ整えられてきています。
残る課題
一方で、以下のような課題も残っています。
- 工期と人員のバランス
- 中小企業の対応の遅れ
- 発注者の理解不足
- 現場ごとのばらつき
- 賃金とのバランス
大手ゼネコンと中小の専門工事業者の間では、取組みの進み方に差があるのが実情です。業界全体で底上げを図るためには、発注者と受注者が一緒になって工期や価格を見直していく必要があります。賃金の水準が下がらないようにしながら、労働時間を短縮していく工夫も今後の鍵になります。
求人選びのチェックポイント
WLBを重視して求人を選ぶ際のチェックポイントは以下のとおりです。
- 年間休日数が明示されているか
- 完全週休2日制か
- 残業時間の実態
- 有給取得率
- 育休・介護休の実績
- ICT化の状況
求人票の文字面だけではなく、面接の場で具体的な数値や事例を質問してみることが重要です。実態を正直に教えてくれる会社ほど信頼に値しますし、逆に曖昧にはぐらかされた場合は慎重になる目安になります。入社前に十分な情報収集を行うことが、長く働ける職場選びの第一歩です。
まとめ
建設業界のワークライフバランスは、確実に改善しています。以前の「ブラック」なイメージは過去のものになりつつあり、若手にとって魅力的な業界へと変わってきました。これから転職を考える方は、WLBを重視した会社選びをすることで、長く働きやすい職場を見つけられます。
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