一度IT業界に転職したものの、再び建設現場に戻った36歳のPさん(仮名)にお話を伺いました。異業界を経験して初めて見えた建設業の魅力と、「出戻り転職」の決断について、率直に語ってくれました。
Pさんの話からは、若いうちに一度別の世界を見たからこそ言語化できる建設業の価値が随所ににじんでいました。同じ業界に居続けていると当たり前に感じてしまうことも、離れてみて初めて気づくことが多いと教えてくれます。
取材対象:Pさん(仮名)のプロフィール
まずはPさんの経歴を整理します。高校を卒業してすぐに建設の世界に飛び込み、一度離れて再び戻ってきたという珍しい歩みを持つ方です。現在は造作大工として、住宅の内装を中心に腕をふるっています。
- 年齢:36歳
- 学歴:高校卒業
- 職歴:建設作業員8年→IT営業3年→建設作業員(出戻り2年目)
- 現職:大工(造作大工)
- 理由:「やっぱり建設現場が自分に合っていた」
IT業界への転職のきっかけ
「建設作業員として8年働いた頃、『もっと楽な仕事があるのでは』と思って転職を考えました。友人の紹介で、IT系の営業職に応募して採用されたんです。」
Pさんは建設現場の体力仕事から離れて、オフィスワーク中心の生活に憧れていました。給料も大手IT企業のほうが高いと聞き、転職を決意しました。
当時の心境を振り返りながら、Pさんは「若さゆえに『隣の芝生』に強く惹かれていた」と笑います。スーツを着て働く友人の姿が眩しく見えたことも、転職を後押しした理由の一つだったそうです。
IT業界での3年間
IT業界でPさんが感じたこと、経験したことは以下のとおりです。
最初の半年は覚えることが多く、新鮮な気持ちで毎日を過ごしていたといいます。しかし業務に慣れてくると、一日中パソコンに向かっている自分の姿に違和感を覚えるようになり、体を動かしていた頃の充実感がしみじみと思い出されたそうです。
- スーツでのオフィス勤務
- パソコン中心の業務
- クライアントへの提案営業
- 数字のプレッシャー
- 固定したルーティンワーク
IT業界で感じた違和感
最初は新鮮だったIT業界の仕事も、徐々に違和感を感じるようになったといいます。
違和感の正体を一言で表すのは難しいものの、「自分が何を作っているのかが見えない」という感覚が大きかったとPさんは振り返ります。一日の終わりに目に見える成果が残らないことが、想像以上に精神的な負担となっていたのです。
| 項目 | IT業界で感じたこと |
|---|---|
| 仕事の手応え | 形に残らない虚しさ |
| 同僚との関係 | 個人主義でドライ |
| 体の使い方 | 運動不足による不調 |
| ストレス | 数字のプレッシャー |
| やりがい | 達成感が薄い |
出戻り転職を決めた理由
「IT業界で3年働いた頃、『自分には合っていない』とはっきり感じるようになりました。体を動かして形に残るものを作る建設現場が、本当は自分に合っていたと気づいたんです。」
Pさんが挙げた出戻りの理由は以下のとおりです。
一度離れたからこそ、建設業のどこに自分が惹かれていたのかを具体的に言葉にできるようになったと話します。決断には勇気が必要でしたが、毎朝目覚めた時の気持ちの重さに耐えるほうがよほど辛かったそうです。
- 建設現場の仕事の達成感
- 職人仲間との人間関係
- 体を動かす健康的な生活
- 手に職をつける安心感
- 将来独立できる可能性
家族の反応
出戻り転職について、家族はどう反応したか聞きました。
「妻は最初『IT業界で頑張れないのか』と心配しましたが、私がIT業界で徐々に元気を失っていくのを見ていたので、最終的には応援してくれました。『あなたが楽しそうに働いている姿が見たい』と言ってくれたのが嬉しかったです。」
家族の理解を得るために、Pさんは転職前から少しずつ自分の気持ちを話し合ってきたといいます。いきなり決断を伝えるのではなく、家計の見通しや将来設計を一緒に考える時間を持ったことが、円満な決断につながりました。
前の建設会社に戻ったのか
Pさんは、以前働いていた建設会社には戻らず、別の工務店に就職しました。
- 新しい環境でのチャレンジ
- 前の会社の事情
- 自分の目指す方向性
- 地域の変化
「前の会社とは今でも仲良くしていますが、新しい挑戦の気持ちで別の会社を選びました。」
新しい工務店を選ぶ際には、造作大工として腕を磨ける環境かどうかを最優先に考えたそうです。同じ業界でも会社によって文化や得意分野が異なるため、自分の目指す方向性に合う職場を選ぶことが大切だと強調していました。
IT業界経験が活きる場面
意外にも、IT業界での経験が現在の大工の仕事に活きている場面があるそうです。
営業時代に身につけた「相手の要望を引き出す質問の仕方」は、施主との打ち合わせで特に役立っているといいます。職人の世界では寡黙が美徳とされることもありますが、現代の住宅工事では丁寧なコミュニケーションが信頼獲得の鍵になると感じているそうです。
- 施主への説明・提案能力
- 書類作成・見積もりの効率
- スマホアプリの活用
- 効率的な段取り
- 顧客対応の丁寧さ
年収の変化
年収の変化を教えてくれました。
- 建設作業員時代:年収約450万円
- IT業界時代:年収約550万円
- 現在(出戻り2年目):年収約470万円
「IT時代の方が年収は高かったですが、生活の満足度は今の方が圧倒的に高いです。お金より大切なものがあると実感しました。」
建設業に戻って気づいたこと
出戻りしてから気づいた、建設業の良さを挙げてくれました。
再び現場に立った初日、木の香りや工具の音に包まれた瞬間、体の力がすっと抜けたのを覚えているそうです。自分が本来いるべき場所に戻ってきたという実感が、その後の仕事への向き合い方を大きく変えました。
- チームで一緒に何かを作る喜び
- 形に残る達成感
- 職人としての誇り
- 地域社会への貢献
- 自分のペースで働ける自由
出戻りを考える人へのアドバイス
「一度業界を離れた人が戻ってくるのは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、他業界を経験したからこそ見える建設業の魅力があります。私のように出戻りを考えている人がいたら、迷わず戻ってほしいと思います。建設業界は、経験者の出戻りを歓迎してくれる業界です。」
Pさんは最後に、「焦らず丁寧に自分の気持ちと向き合ってほしい」と付け加えました。一度の回り道は決して無駄ではなく、むしろ自分にとって本当に大切なものを見つけるための貴重な経験になるといいます。
まとめ
Pさんの経験は、建設業界の魅力を「異業界の目」で再発見した事例です。他業界を経験することで、自分に合う仕事が何かを真剣に考えるきっかけになります。出戻りを考えている方、現在の仕事に迷いを感じている方にとって、貴重な参考事例でしょう。
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