配管工として40年以上のキャリアを持つ、65歳のベテラン職人Kさん(仮名)にお話を伺いました。高度経済成長期から現代まで、配管業界の変遷を見つめ続けてきたKさんが語る、仕事への想いと若手へのメッセージです。

取材当日、Kさんは作業着のままインタビュー会場に現れ、手には長年使い込んだ工具袋を持っていました。現役引退後も顧問として若手の指導にあたるKさんの話しぶりは穏やかで、建設業の現場を知り尽くした方ならではの説得力がありました。一問一問に丁寧に答えてくださる姿からは、配管という仕事への深い愛情と誇りが伝わってきます。

取材対象:Kさん(仮名)のプロフィール

  • 年齢:65歳
  • 職種:配管工(給排水・空調)
  • 経験年数:42年
  • 現職:設備工事会社の顧問
  • 家族:妻・息子2人(1人は同業)
  • 保有資格:管工事施工管理技士1級、給水装置工事主任技術者

若い頃は手技一本で現場を走り回っていたKさんも、経験を重ねる中で国家資格の取得に挑戦し、管理技術者として後進を導く立場になっていきました。資格は単なる肩書きではなく、現場を俯瞰して判断するための引き出しを増やす存在だったと振り返ります。

配管工になったきっかけ

「中学卒業後、親戚の紹介で配管屋に入りました。当時は高度経済成長期で、どこに行っても工事現場がありました。『一生食いっぱぐれない仕事を』という両親の願いもあって、手に職をつける道を選びました。」

初日に渡された工具箱を持つだけで手がしびれたこと、先輩の背中について現場を駆け回った日々のことを、Kさんは昨日のことのように語ってくれました。右も左も分からないまま飛び込んだ世界でしたが、毎日が発見の連続で、日に日に覚えていく作業の多さに充実感を感じていたそうです。

見習い時代の思い出

見習い時代の思い出を語ってくれました。

  • 朝5時起きの日々
  • 親方の鞄持ちから
  • 道具の名前を覚える
  • 現場で叱られながら学ぶ
  • 夜は工具の手入れ
  • 休日は少なかった

「当時は厳しかったですが、それが当たり前でした。親方の背中を見て覚える世界でした。」

言葉で手順を教えてもらえる機会は多くはなかったものの、親方の動きを真似て試行錯誤する中で自然と身体が覚えていったといいます。教えられる前に自分で気づくことが求められる環境で、観察力と考える力が養われたとKさんは語ります。

配管工事の変化

40年間で配管工事はどう変わったか聞きました。

項目現在
配管材料鉄管中心樹脂管が主流
接合方法ねじ切り・溶接ワンタッチ継手
図面手書きCAD・BIM
工具手動工具電動工具
労働時間制限なし働き方改革

技術の進歩によって作業のスピードや精度は格段に上がった一方で、職人に求められる知識の幅も広がったとKさんは指摘します。新しい材料の特性を理解し、最新の図面ソフトにも対応する必要があるため、ベテランになっても学び続ける姿勢が欠かせないのが今の配管業界です。

印象に残る現場

40年の中で特に印象に残る現場を教えてくれました。

「大きな病院の建設です。手術室の配管工事は、0.1ミリ単位の精度が求められました。多くの人の命を預かる配管だと思うと、手が震えたのを覚えています。無事完成して、20年経った今も現役で使われているのが誇りです。」

病院のように失敗が許されない現場では、チーム全員の集中力と連携が不可欠だったといいます。図面と実物を照らし合わせながら一本一本確認を積み重ね、納品検査の瞬間には一緒に作業した仲間と目を合わせて安堵したというエピソードが印象的でした。

配管工の魅力

Kさんが感じる配管工の魅力を聞きました。

  1. 生活インフラを支える:なくてはならない仕事
  2. 長く続けられる:経験が財産
  3. 独立の道:一人親方になれる
  4. 感謝される:施主から直接
  5. 手に職:失業の心配なし
  6. 達成感:工事完了の瞬間

「蛇口をひねればお湯が出る、それは当たり前に見えて誰かが設計し、誰かが工事したからこそ成り立つ世界なんです」とKさんは静かに語ります。自分の仕事が人の暮らしに直結しているという実感は、他の職種ではなかなか味わえないものだと話してくれました。

40年間の苦労

一方で、40年の中には多くの苦労もあったといいます。

  • 景気の波で仕事が減る時期
  • 腰痛との付き合い
  • 夏の暑さ・冬の寒さ
  • 狭い場所での作業
  • 夜間工事・早朝工事
  • 理不尽な要求への対応

特にバブル崩壊後の数年間は仕事量が激減し、家族を養いながら技術を磨き続ける難しさを痛感したそうです。そうした厳しい時期を乗り越えられたのは、日頃から培った人脈と、どんな現場にも真摯に向き合う姿勢が評価されたからだとKさんは振り返ります。

息子への継承

Kさんの息子さんの1人も配管工として働いています。

「自分の仕事を継いでくれるのは嬉しいですね。でも、強要はしていません。息子が自分の意思で選んだ道です。今は自分で工夫しながら、新しい技術も取り入れて頑張っています。頼もしいですよ。」

親子とはいえ現場では一職人同士として接することを心がけ、過剰に口を出さないよう意識しているそうです。息子さんが新しいツールや施工方法を教えてくれる場面もあり、世代を超えた学び合いがあると嬉しそうに話してくれました。

若手への想い

若手配管工への想いを語ってくれました。

「若い人たちには、焦らず基本を大切にしてほしいです。新しい道具や技術も大事ですが、配管の原理原則は変わりません。また、体を大切にしてほしい。自分は若い頃に無理をして腰を痛めました。長く続けるには、体のケアが一番大切です。」

基本を丁寧に積み上げる人ほど、後になって大きな成長を遂げるとKさんは力強く話します。焦って背伸びをするより、毎日の作業をひとつずつ確実に身につけることが、結果的に一番の近道だというメッセージが印象的でした。

現在の活動

現在のKさんの活動を教えてくれました。

  • 顧問として若手の指導
  • 技能講習の講師
  • 現場のコンサルティング
  • 業界団体の活動
  • 地元の趣味の時間

現役の職人としての作業量は減らしつつも、技術を次の世代に伝える役目に喜びを感じているそうです。講習では実物の配管材料を手に取りながら解説することを大切にしており、教科書だけでは伝わらない手触りや重さを若手に感じてもらえるよう工夫しています。

これからのこと

これからのことを聞きました。

「完全引退はまだ先かな。体が動くうちは、若手に技術を伝えていきたいです。自分が先輩から受け継いだものを、次の世代に渡していく。それが職人の責任だと思っています。」

受け継いできた技術を惜しみなく伝えていく姿は、多くの若手にとって心強い存在です。先輩から教わったことを次世代へ手渡していくという循環こそが、建設業の根底を支えてきた伝統なのだと改めて感じさせられる言葉でした。

まとめ

Kさんの40年のキャリアは、配管工という仕事の奥深さと、職人の誇りを教えてくれます。技術は変わっても、ものづくりの基本と人への想いは変わりません。これから配管工を目指す方にとって、大きな励みになる事例です。

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