夫婦でクロス貼り(壁紙施工)の仕事をしている40代のHさん・Iさんご夫妻(仮名)にお話を伺いました。ご主人が元請の工務店から仕事を受け、奥さんが現場で一緒に作業するスタイルで10年以上続けているそうです。家族経営のメリットと難しさ、そして現場での夫婦関係について語ってくれました。

建設業界というと男性中心のイメージがありますが、内装工事の分野ではこのように夫婦や家族単位で活動する職人さんも少なくありません。小回りの利く作業体制と、互いの呼吸が合うチームワークは、家族経営ならではの強みとして元請からも重宝される存在です。

取材対象:Hさん・Iさんご夫妻(仮名)のプロフィール

  • Hさん(夫):45歳、クロス職人歴20年、一人親方
  • Iさん(妻):42歳、手伝い始めて10年
  • 主な仕事:住宅・マンションのクロス貼り
  • 事業形態:一人親方+手伝い
  • 子ども:中学生1人、小学生1人

お二人は同じ地元出身で、Hさんが20代半ばで独立したころに結婚されました。当時Iさんはまったく建設業とは無関係の職場で働いており、壁紙を貼るような作業に自分が関わる未来は想像していなかったそうです。

夫婦で働くようになったきっかけ

「結婚当初は私(Iさん)が事務職で、夫がクロス職人として働いていました。子どもが少し大きくなったタイミングで、私が現場の手伝いを始めたんです。」

最初は夫の下請けとして養生や片付けから始め、徐々にクロス貼りの技術を学んでいきました。現在では、夫婦2人で年間100件以上の現場をこなしているそうです。

Iさんが現場に入るきっかけとなったのは、Hさんの腰痛でした。1人での作業が続くと無理がかかり、家族の健康を守る意味でも「2人でやれば負担が分散できる」と考えたそうです。結果として、仕事の効率が上がっただけでなく、お互いの体調を気遣い合える環境が生まれました。

夫婦で働くメリット

ご夫婦が感じる家族経営のメリットを教えてくれました。

  • 2人分の人件費を家計にダイレクトに
  • コミュニケーションがスムーズ
  • お互いのペースがわかる
  • 家族との時間の融通が効く
  • 子どもの行事に合わせて仕事を調整
  • 信頼できるパートナーとの仕事

「現場での指示が言葉少なくても伝わるのは大きな強みです」とHさんは語ります。長年一緒に暮らしているからこそ、相手が次に何をしてほしいかを察することができ、無駄な動きが減るそうです。

家族経営の難しさ

一方で、夫婦で働くからこその難しさもあるそうです。

難しさ対処法
仕事と家庭の切り替え現場では仕事優先
お互いの役割分担得意分野を決める
意見の衝突現場では夫のリーダーシップ
子どもとの時間確保土日・夏休みは極力休む
体調管理片方が無理しすぎないように

「夫婦喧嘩をそのまま現場に持ち込むと、絶対に仕事の質が落ちます」とIさんは言います。お二人は、現場に入る前に必ず気持ちを切り替えることをルールにしているそうです。どうしても空気が悪い日は、あえて作業中の会話を最小限にし、役割だけに集中することで乗り切っていると教えてくれました。

仕事の流れ

お二人の典型的な1日のスケジュールを教えてもらいました。

  1. 6:00:起床、朝食、子どもの準備
  2. 7:30:子どもを送り出し、道具を車に積む
  3. 8:00:現場へ出発
  4. 8:30〜12:00:午前の作業(養生・下地処理)
  5. 12:00〜13:00:昼休憩(コンビニや持参弁当)
  6. 13:00〜16:30:クロス貼り本番
  7. 16:30〜17:30:片付け・清掃
  8. 18:00:帰宅、夕食、子どもの宿題を見る

朝と夕方の時間帯は子ども中心の生活です。この時間を守るために、日中の作業は効率を意識して進めるようにしているそうです。昼の休憩ではお互いの体調を確認し合い、午後の配分を柔軟に変えることもあると話してくれました。

年収と生活

夫婦2人で働く場合の年収について聞きました。

  • 世帯年収の目安:約700〜900万円
  • 繁忙期・閑散期の差が大きい
  • 材料費・車両費・保険料等を差し引いた実質
  • 会社員時代より収入は多いが、税金・年金は自分で管理

「会社員の頃より収入は増えましたが、経費や税金の管理は大変です。確定申告のために、記録を毎月きちんとつけるようにしています。」

近年は会計ソフトを活用することで、領収書の整理や帳簿付けの負担がかなり軽減したそうです。ただし制度の変更も多いため、最新情報を追いかけ続ける努力は欠かせないと話していました。

子どもとの両立

子育てと仕事の両立について伺いました。

  • 学校行事には2人で参加することが多い
  • 夏休みや冬休みは少し仕事を減らす
  • 子どもが病気のときはどちらかが休む
  • 現場によっては早上がりも可能

「会社員だと夫婦どちらかが有給を取るのが大変ですが、私たちは自分たちでスケジュールを決められます。この自由度は家族経営ならではの特権です。」

子どもたちにとっても、両親が同じ職場で働いている姿を間近で感じられることは良い経験になっているそうです。休日に「今度現場を見に行きたい」と言われることもあり、仕事を身近に感じてもらえる機会が自然と生まれています。

家族経営を考える方へ

最後に、家族経営を検討している方へのアドバイスをいただきました。

「夫婦で働くのは大変な面もありますが、お互いを尊重する姿勢があれば必ずうまくいきます。家族との時間と仕事を両立させたい方にはおすすめの働き方です。ただし、税務や保険の知識は最低限必要なので、事前にしっかり準備してください。」

お二人は「いきなり夫婦でフルに働く必要はなく、まずは少しずつ関わってみるのがおすすめ」と語ります。相手の仕事ぶりを知ること、自分にどこまでできそうかを確かめることが、長く続けるための現実的な第一歩だと教えてくれました。

まとめ

Hさん・Iさんご夫妻の体験は、家族で建設業に携わる1つのモデルケースです。家族経営ならではの柔軟性と絆を活かした働き方は、これからの多様な働き方の1つとして注目に値します。

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