60代で建設作業員を引退し、施設警備員に転職した男性Mさん(仮名、62歳)にお話を伺いました。40年以上建設業界で働いてきたMさんが、なぜ警備員に転身したのか。体力の変化と新しいやりがいについて、率直に語ってくれました。

Mさんの体験談は、長年現場で汗を流してきた方々にとって、これからの働き方を考えるうえで多くの示唆を含んでいます。体を酷使してきたからこそ感じる変化と、それでもなお働き続けたいという強い意志が、落ち着いた語り口の中にじんわりとにじんでいました。

取材対象:Mさん(仮名)のプロフィール

まずはMさんの経歴を簡単に紹介します。高校卒業後すぐに建設業界に入り、40年以上にわたり土木・建築の現場を渡り歩いてきた大ベテランです。現在はご夫婦での静かな生活を支えるため、無理のない働き方を選ばれています。

  • 年齢:62歳
  • 前職:建設作業員(40年以上)
  • 現職:施設警備員(60歳から)
  • 主な現場経験:土木・建築の幅広い現場
  • 家族:妻(子どもは独立済み)

転身のきっかけ

「40年以上、建設現場で体を動かしてきました。60歳が近づいてきて、体力的にきつくなってきたのと、腰の痛みが慢性化してきたのがきっかけでした。」

Mさんは60歳を目前に、「もうこのままではきつい仕事は続けられない」と感じるようになったそうです。そんな時、友人から施設警備の仕事を紹介されました。

周囲の先輩たちが体を壊して現場を離れていく姿を見てきたことも、早めに決断を下す後押しになったといいます。若い頃のようには無理が効かないと自覚できたことで、むしろ前向きに次のキャリアを考えられたそうです。

なぜ警備員を選んだか

Mさんが警備員を選んだ理由は以下のとおりです。

警備員という仕事は、長く建設業界で働いてきた方にとって比較的イメージしやすく、現場経験で培った感覚がそのまま活かせる仕事でもあります。Mさんも最初は「自分に務まるのか」と不安を感じていましたが、実際に働き始めてみるとむしろ肌に合うと感じたそうです。

  • 体力的な負担が少ない
  • 60歳以降でも採用されやすい
  • 建設業界で培った安全意識が活きる
  • 生活リズムが安定している
  • 一人でも働ける現場が多い

建設業経験が活きた場面

「建設現場で長年働いてきた経験は、警備員の仕事でも意外と役立ちます。特に現場の危険を予測する力は、他の警備員より強いと自負しています。」

長年続けてきた危険予知の習慣は、体に染みついた感覚として残り続けます。施設の中を巡回していても、床の濡れや段差、火災の原因となりそうな機器の異常に自然と目が向き、異変を早めに察知できるのは大きな強みだと感じているそうです。

活きたスキル警備業務での活用
安全意識施設内の危険箇所の把握
KY活動の習慣巡回時のリスク察知
体力長時間の立ち仕事に耐える
コミュニケーション施設利用者との対応
緊急時対応冷静な判断力

転職時の不安

Mさんが転職前に感じていた不安は、多くの同世代の方も共感するものでしょう。

不安の多くは、実際に働き始めてみると思っていたほど大きな問題ではなかったと振り返ります。最初の一歩を踏み出す勇気さえあれば、あとは職場の人たちが温かく迎えてくれたそうで、「考えすぎずに飛び込んでみてよかった」と話していました。

  • 60歳過ぎで新しい仕事に慣れるか
  • 警備員の資格が必要か
  • 給料がどれくらい下がるか
  • 同世代の仲間がいるか
  • 生活リズムの変化への対応

警備員になるための準備

警備員として働き始めるには、法定の「新任教育」を受ける必要があります。

教育内容は警備業務の基礎から実践的な対応まで幅広く、未経験者でもしっかりと知識を身につけてから現場に出られる仕組みになっています。Mさんも「学ぶことが多くて最初は驚いたが、丁寧に教えてもらえたので不安なく始められた」と語ります。

  • 基本教育:20時間
  • 業務別教育:15時間
  • 合計:35時間の教育
  • 教育は会社が実施(費用は会社負担が一般的)

現在の仕事内容

Mさんは現在、商業施設の昼間警備を担当しています。主な業務は次のとおりです。

巡回や受付を中心とする業務は、一見単調に見えても、利用者の安全を支える責任ある仕事です。日々同じルートを歩いているからこそ、ちょっとした変化に気づけるのだとMさんは誇らしげに話してくれました。

  1. 施設内の定期巡回
  2. 出入口での受付・案内
  3. 駐車場の監視
  4. 緊急時の対応
  5. 不審者・不審物のチェック
  6. 施設利用者からの問い合わせ対応

年収の変化

建設作業員時代と現在の年収を比較してもらいました。

  • 建設作業員時代:年収約450万円
  • 現職(警備員2年目):年収約320万円
  • 減額分:約130万円
  • 年金との合計:約500万円

「年収は下がりましたが、年金と合わせれば生活に困りません。何より体が楽になったのが一番大きいです。」

新しいやりがい

警備員として2年が経ち、Mさんは新しいやりがいを見つけたと言います。

「建設作業員時代は『物を作る喜び』がやりがいでしたが、警備員は『施設を守る』『人を安心させる』という違う種類の充実感があります。お客さんから『ありがとう』と言われる機会も多く、これまでとは違う満足感を感じています。」

現場で黙々と体を動かしていた頃とは異なり、人と直接関わる時間が増えたことで、自分の中にある優しさのようなものが引き出されたとも感じているそうです。

建設業との違い

Mさんが感じる建設業と警備業の違いを教えてくれました。

どちらの仕事にも良さがあり、どちらが優れているという話ではありません。ただ、年齢を重ねて無理が効かなくなった時に選べる選択肢があるというだけでも、心の余裕が生まれると感じているそうです。

  • 体力的負担:圧倒的に軽い
  • 勤務時間:規則正しい
  • 人間関係:個人作業が多い
  • 達成感:形に残らない
  • 収入:建設業より低い

同世代へのメッセージ

「建設業で長年働いてきた方が、60代でキャリアチェンジを考えるなら、警備員は現実的な選択肢の1つです。培ってきた安全意識や体力は、警備業でも大きな武器になります。年収は下がりますが、年金と合わせれば十分やっていけます。何より体が楽になるのが最大のメリットです。無理して建設業を続けて体を壊すより、早めに切り替える決断も大切だと思います。」

Mさんは最後に「プライドを少し脇に置く勇気も必要」と付け加えました。長年の職人としての誇りを胸にしまい、新しい場所で一から学ぶ姿勢を持てるかどうかが、セカンドキャリア成功の分かれ目になるといいます。

まとめ

Mさんの体験は、建設業で培ったスキルが他業種でも活きることを示しています。体力的な限界を感じ始めた方にとって、警備業への転身は1つの有効な選択肢です。これまでの経験を無駄にせず、新しいキャリアを築くヒントになる体験談でした。

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