建築施工管理技士として活躍する30代女性Fさん(仮名)にお話を伺いました。「最初は現場に女性がいなくて戸惑った」と語るFさんが、どのようにキャリアを築き、今では主任として現場を任されるまでになったのか。女性ならではの視点と苦労・やりがいを語ってもらいました。

取材場所に現れたFさんは、落ち着いた佇まいのなかに芯の強さを感じさせる方でした。10年という歳月の重みを感じるその言葉には、現場で積み上げてきた実績と自信がにじみ出ています。これから建設業界を志す方にとって、同じ道を先に歩んできた先輩の生の声ほど心強いものはないでしょう。

取材対象:Fさん(仮名)のプロフィール

  • 年齢:34歳
  • 学歴:大学工学部 建築学科卒業
  • 職種:建築施工管理技士(10年目)
  • 保有資格:1級建築施工管理技士、1級建築士
  • 現在の立場:主任クラス

施工管理と設計の両方の資格を持っているFさんは、現場での判断の幅がとても広い方です。設計の意図を理解しながら現場をまとめ上げる姿勢は、周囲の職人や発注者からも信頼を集めています。忙しい日々のなかでも後輩育成に時間を割くなど、次世代へのバトンを意識した働き方をしている点も印象的でした。

建設業界を選んだ理由

「大学で建築を学んでいたとき、設計よりも実際に建物を作る現場の仕事に興味を持ちました。女性が少ない業界だと知っていましたが、『自分が切り拓けばいい』という気持ちで選びました。」

入社したのは中堅ゼネコン。女性施工管理技士は会社でもごく少数でしたが、社長の「女性も活躍できる会社にしたい」という方針に共感したそうです。

進路を決める際にFさんの背中を押してくれたのは、大学のゼミで建設現場を見学したときの体験でした。図面の上に描かれた線が実際の構造物として立ち上がる様子に強く惹かれ、「自分の手で建物を形にしたい」という思いが固まっていったといいます。学生時代から現場に足を運ぶ経験を大切にしていたことが、今のキャリアの原点になっていると振り返ります。

入社初期に感じた壁

入社当初、Fさんは様々な壁を感じたといいます。

  • 女性用トイレ・更衣室が現場にないことがあった
  • 先輩や職人に「女性は現場に来なくていい」と言われた
  • 同世代の友人から「なんで建設業?」と聞かれる
  • 結婚・出産との両立への不安

「でも、これらは時間とともに解決していきました。女性用設備は会社も改善に取り組んでくれましたし、現場の方々も接するうちに普通に話してくれるようになりました。」

入社したての頃は、毎晩のように自分の選択が正しかったのか自問する日々だったそうです。それでも翌朝には気持ちを切り替えて現場に向かう——そんな日々の積み重ねが、今の強さにつながったのかもしれません。厳しい言葉を投げかけてきた職人さんが後になって味方になってくれたという経験も、Fさんの中で大切な思い出として残っているといいます。

成長のターニングポイント

Fさんのキャリアには、いくつかのターニングポイントがありました。

時期出来事
入社3年目2級建築施工管理技士に合格
入社5年目初めて担当現場を任される
入社7年目1級建築施工管理技士に合格
入社8年目1級建築士に合格
入社10年目主任として複数現場を統括

資格を一つ取るたびに、現場で任される範囲が広がっていったというFさん。自分の成長を形として示せる資格は、自信を積み重ねる上でも大きな意味を持ちました。とくに5年目に初めて一つの現場を最後まで任されたときの緊張感と達成感は、今でも鮮明に覚えているそうです。

現場での工夫

女性施工管理技士として現場で働くうえで、Fさんが工夫していることを聞きました。

  • 職人さんとの信頼構築を最優先
  • 技術力で認められることを重視
  • 安全管理には徹底的にこだわる
  • 女性ならではの気配りを活かす(細かい配慮)
  • 体力差は段取りと工夫でカバー

「『女だからできない』ではなく、『どうすればできるか』を常に考えてきました。」

Fさんが特に意識しているのは、職人さん一人ひとりの名前と得意分野を早く覚えることだそうです。名前を呼んで話しかけるだけで信頼関係の土台が築かれやすくなり、指示の通りも格段に良くなるといいます。小さな心配りの積み重ねが、現場を滑らかに動かす潤滑油になっているのです。

やりがいを感じる瞬間

Fさんが施工管理の仕事にやりがいを感じる瞬間を教えてくれました。

  1. 担当した建物が無事に引き渡されたとき
  2. 職人さんから「あんたが担当でよかった」と言われたとき
  3. 後輩女性から相談されるようになったとき
  4. 家族が完成した建物を見に来てくれたとき

「担当した建物が何十年も街に残る。その実感は他の仕事では得られないものです。」

自分の子どもや家族を建物の前に連れて行き、「ママが作ったんだよ」と話す瞬間は、何物にも代えがたい誇らしさがあるそうです。街を歩いているとき、ふと視界に入った建物が自分の担当物件だったりすると、自然と笑顔がこぼれるとFさんは語ります。そうした積み重ねが、日々の仕事を支える大切な原動力になっています。

女性を取り巻く環境の変化

Fさんが入社した10年前と現在を比べて、建設業界の女性を取り巻く環境は大きく変わったといいます。

  • 女性用トイレ・更衣室の設置がほぼ標準化
  • 女性管理職の登用が進む
  • 産休・育休の取得が当たり前に
  • 女性同士のネットワークが充実
  • 女性向け作業着の種類が増えた

変化の速度は当初想像していたよりも早く、業界全体で本気の取り組みが進んでいるとFさんは感じています。今ではほとんどの現場で女性用の設備が当たり前に用意され、作業着も体格に合わせた選択肢が豊富に揃っています。かつては悩みの種だった細かな不便が、一つずつ解消されていく様子を目の当たりにしてきたそうです。

これから業界を目指す女性へ

「建設業界は今、本気で女性活躍を推進しています。10年前の私が戸惑った壁の多くは、もう解消されています。興味があるなら飛び込んでみてください。大変なことはありますが、それ以上のやりがいと成長が必ずあります。」

Fさんは、最後にもう一つメッセージをくれました。「不安があるのは自然なことです。でも、その不安を抱えたまま一歩を踏み出してみてください。現場には必ず支えてくれる仲間がいますし、自分の成長を喜んでくれる人もいます。飛び込む前に諦めてしまうのはもったいないと、今の私は心から思います。」その言葉には、同じ道を歩んできたからこその説得力がありました。

まとめ

Fさんの経験は、女性が建設業界で着実にキャリアを築けることを示しています。業界全体で女性活躍を推進する動きが進んでおり、今後さらに女性が働きやすい環境が整っていくでしょう。

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